概要
梅毒は、細菌による感染症であり、性感染症(STI)の一種です。
近年、日本国内では梅毒患者が増加傾向にあり、若年層から高齢者まで幅広い年齢層で発症がみられています。
梅毒の大きな特徴は、局所症状にとどまらず全身症状を引き起こす点です。
早期に適切な治療を行えば治癒可能な病気ですが、治療が遅れると脳梗塞・神経障害・心疾患など、重篤な状態に進行することがあります。
また、梅毒は大人だけの病気ではなく、**妊娠中の母親から胎児へ感染する「先天梅毒」**も存在し、早産・死産や出生後の発症リスクがあります。
梅毒は決して日本特有の疾患ではなく、過去には世界的な流行を繰り返してきました。
1943年に治療法が確立されましたが、その後も流行と沈静化を繰り返し、現在も再拡大が問題となっています。
原因・感染経路
梅毒は、トレポネーマ・パリダムという細菌に感染することで発症します。
主な感染経路は以下の通りです。
- 性行為による粘膜・皮膚の直接接触
- オーラルセックス
- キス
- 母体から胎児への垂直感染(先天梅毒)
症状に気付かないまま性行為を行い、パートナーに感染させてしまうケースも少なくありません。
症状
梅毒の症状は、感染後の経過によって4つの時期(第1期~第4期)に分類されます。
潜伏期間は約3~13週です。
初期症状(男女差)
女性
- 子宮頸部、大陰唇・小陰唇周辺に潰瘍
- 痛みがほとんどない
- 鼠径部のリンパ節が腫れることがある
男性
- 亀頭、陰茎、冠状溝、周囲皮膚にしこり(硬結)
- 視認しやすく、目で確認できる場合が多い
第1期(感染後約3か月以内)
- 感染部位にしこりができる
- 進行すると**硬性下疳(へこんだ潰瘍)**を形成
- 大きさは3mm~3cm程度
- 痛み・かゆみがなく、自然に消えることもある
➡ 自覚症状が乏しく、見逃されやすい時期です。
第2期(感染後3年以内)
- 手のひら・足の裏・体に赤い発疹
- 発疹は数週間で消えることがある
- 発熱、倦怠感、リンパ節腫脹、湿疹など全身症状
➡ 菌が血液を介して全身に広がるため、症状が多彩になります。
第3期(感染後10年以内)
- ゴム腫と呼ばれる硬い腫瘍が全身に出現
- 皮膚だけでなく、骨・筋肉・内臓にも発症
- 周囲組織を破壊し、症状が進行
※現在では、ここまで進行するケースは非常に稀です。
第4期(晩期梅毒)
- 脳梗塞
- 心不全
- 神経障害
- 大動脈瘤・大動脈破裂
生命に関わる状態となり、完治が困難になります。
治療により命を取り留めても、後遺症が残る可能性があります。
検査および診断
問診および診察により梅毒が疑われる場合、各種検査を行います。
主な検査方法は以下の2つです。
- 血液検査
血中の梅毒抗体を確認する方法 - 病変部の検査
患部から細菌を採取し、培養・検出する方法
なお、感染直後では抗体が十分に産生されていないため、
感染機会から約4週間以上経過していないと正確な診断が難しい場合があります。
銀座にある当院の泌尿器科では、梅毒の検査を行っております。
感染の可能性がある方、症状に不安がある方はお気軽にご相談ください。
また、梅毒はパートナーにも感染している可能性が高いため、
パートナーと同時に検査・治療を行うことを強くおすすめします。
治療
梅毒は自然治癒することはありません。
風邪のように安静にしていれば治る病気ではなく、
必ず薬物療法が必要です。
一時的に症状が軽快することはありますが、
それは完治ではなく、菌が体内で潜伏している状態です。
ただし、梅毒は適切な治療を行えば完治可能な感染症であり、
決して治療が困難な病気ではありません。
治療方法
梅毒の治療には、主にペニシリン系抗生物質を使用します。
- ペニシリンアレルギーがある場合は、別の抗生物質を使用
- 1日3回の内服を数週間継続
- 治療後に再検査を実施
症状が消えても菌が完全に排除されていないことがあるため、
医師の指示通り最後まで服用を続けることが重要です。
治療期間の目安
- 第2期梅毒:約8週間
- 第3期梅毒:約12週間
治療中に症状が改善すると、
「治った」と自己判断して服薬を中止してしまうケースがありますが、
これは症状悪化や再燃の原因となります。
また、処方される薬は経過観察を前提とした必要量であることが多く、
自己判断で治療を終了せず、必ず医師の指示に従ってください。
梅毒は、症状が消えても水面下で進行するという特徴があります。
治療後の判定(治癒確認)
治療終了後は、血液検査による治療効果判定を行います。
一般的には、
**RPR法(血中の梅毒抗体量を測定する検査)**が用いられます。
ただし、治療後に理想的な陰性値を示すケースは稀であり、
複数の検査結果や経過を総合的に判断します。
治療中・治療後の注意点
- 治療中は性行為を控える
- パートナーも同時に検査・治療を行う
- 自己判断で服薬を中止しない
なお、梅毒は免疫を獲得できない感染症のため、
一度完治しても再感染する可能性があります。
予防
梅毒予防の基本は、感染リスクの高い行動を避けることです。
- 不特定多数との性的接触を控える
- パートナーが梅毒でないことを確認する
- 必要に応じてパートナーにも検査を受けてもらう
コンドームの使用により感染リスクは低下しますが、
梅毒はキスやオーラルセックスでも感染する可能性があるため、
避妊具のみで完全に予防することは困難です。
そのため、
信頼できるパートナーとの関係を保つこと、
定期的な検査を行うことが重要な予防策となります。