男性更年期障害(LOH症候群)とは

かつて更年期障害は女性特有のものと考えられてきましたが、近年では男性にも同様の症状が現れることが分かり、「男性更年期障害(LOH症候群)」として注目されています。

しかし、その認知度はまだ十分とは言えず、自分が男性更年期障害であることに気づかないまま悩んでいる方も少なくありません
この疾患は自然に治るものではなく、適切な医療的対応が必要な病気です。

主な症状

男性更年期障害の症状は多岐にわたり、すべての症状が一度に現れるわけではありません。個人差が大きいのが特徴です。

精神的な症状

  • 不安感・抑うつ感
  • 倦怠感
  • 意欲・モチベーションの低下
  • 記憶力や集中力の低下
  • イライラしやすくなる

身体的な症状

  • 頭痛
  • 発汗
  • 不眠
  • 性機能の低下

「なんとなく調子が悪い」「以前の自分と違う」と感じる程度の変化として現れることも多く、見過ごされがちです。

なぜ自覚しにくいのか

男性更年期障害は比較的新しく知られるようになった概念のため、

  • 「ただの疲れ」
  • 「ストレスのせい」
  • 「年齢の問題だから仕方ない」

と自己判断し、医療機関を受診せずに放置してしまうケースが多いのが現状です。

しかし、放置すると症状の悪化だけでなく、性機能障害や他の疾患を併発するリスクも高まります。
違和感を覚えた段階での相談が重要です。

原因

男性更年期障害の主な原因は、次の2つが深く関係しています。

1. 男性ホルモン(テストステロン)の減少

  • 一般的に40代以降から減少
  • 加齢だけでなく、
    • 食生活の乱れ
    • 睡眠不足
    • 運動不足
      などの生活習慣も影響

近年では生活習慣の悪化により、若年層でも発症するケースが報告されています。

※ただし、男性ホルモンが減少しても、必ず発症するわけではありません

2. 自律神経の乱れ

  • 不規則な生活や強いストレス
  • 交感神経と副交感神経のバランス崩壊

これにより、

  • 倦怠感
  • 集中力低下
  • イライラ
    といった、男性更年期障害と重なる症状が現れます。

ストレスとの関係

ストレスは

  • 男性ホルモンの分泌低下
  • 自律神経の乱れ

の両方を引き起こすため、男性更年期障害の最大のリスク要因と考えられています。

男性更年期障害の症状

男性更年期障害の症状は個人差が大きいものの、大きく分けると
**「身体的症状」「精神症状」「性機能障害」**の3つのカテゴリーに分類されます。

身体的症状

男性更年期障害では、以下のような身体的な不調がみられます。

  • 筋肉や関節の痛み
  • 疲れが抜けにくい、慢性的な疲労感・倦怠感
  • 発汗や動悸
  • 筋力低下、体重減少
  • 内臓脂肪の増加
  • 骨量の減少
  • 体毛や皮膚の変化

これらの直接的な症状に加え、間接的な健康リスクも問題となります。
例えば、内臓脂肪の増加による高血圧リスクの上昇や、筋力低下による転倒・怪我のしやすさなど、二次的な影響が生じる可能性があります。

精神症状

精神面に現れる症状も、男性更年期障害の大きな特徴です。

  • イライラしやすくなる
  • 不安感が強くなる
  • 集中力の低下
  • 気力・意欲の低下
  • 不眠

これらの症状は、日常生活でも誰にでも起こり得るため、男性更年期障害と自覚しにくい点が大きな問題です。

「仕事のストレス」「年齢のせい」と自己判断してしまい、医療機関を受診せずに放置するケースも少なくありません。
この自覚の難しさが、男性更年期障害における精神症状の特徴といえます。

性機能障害

男性更年期障害では、性機能に関する症状が現れることもあります。

  • 勃起不全(ED)
  • 性欲の低下
  • 頻尿

頻尿については、男性ホルモンの減少により膀胱の柔軟性が低下することが一因と考えられています。

男性ホルモンは性機能を司る重要なホルモンであるため、その分泌量が減少すれば性機能に影響が出るのは自然なことです。
しかし、性機能は加齢とともに衰えるものという認識が強く、男性更年期障害が原因だと気づかれにくいのが現状です。

併発リスクのある症状

男性更年期障害の背景にある

  • 男性ホルモンの減少
  • 自律神経の乱れ

は、他の疾患リスクも高めます。

主な併発リスク

  • 糖尿病・高血圧などの生活習慣病
  • 動脈硬化
  • 脳卒中・心筋梗塞
  • 認知機能低下・認知症リスクの上昇

筋力低下や脂肪増加による代謝の悪化、血行不良などが、これらの疾患の引き金となる可能性があります。

検査・診断

男性更年期障害の診断は、問診と血液検査を中心に行われます。

問診

  • 現在の症状
  • 生活習慣
  • 精神状態

などを詳しく確認し、男性更年期障害が疑われるかを判断します。

血液検査

  • 男性ホルモン(テストステロン)の値を測定

年齢平均と比べて著しく低い場合や、以前の検査結果から明らかな低下が確認された場合、男性更年期障害と診断されます。

詳細検査

必要に応じて、

  • 脂質
  • 糖代謝
  • 赤血球
  • 肝機能・腎機能

なども検査し、うつ病や生活習慣病など他疾患との鑑別を行います。

男性更年期障害は症状だけでの判断が難しいため、総合的な検査が重要です。

男性更年期障害の治療

男性更年期障害は、適切な治療によって改善が期待できる疾患です。
治療法は主に以下の4つに分類され、症状の程度や体質、生活背景に応じて選択・併用されます。

  • 生活療法
  • 漢方治療
  • 男性ホルモン補充療法
  • プラセンタ治療

生活療法

生活習慣を見直すことで、症状の改善を目指す治療法です。

主な内容

  • 運動習慣の改善
  • 食生活の見直し
  • 睡眠リズムの調整

特に筋力トレーニングが取り入れられることが多く、筋肉量の増加により
成長ホルモンや男性ホルモンの分泌促進が期待されます。

ここで重要なのは、「体を鍛えること」が目的ではなく、治療の一環である点です。
運動が苦手な方でも無理なく続けられるよう、負荷を抑えたプログラムが組まれます。

漢方治療

体質改善を目的として、テストステロン増加が期待できる漢方薬を用います。

主に用いられる漢方薬

  • 補中益気湯
  • 八味地黄丸
  • 十全大補湯
  • 芍薬甘草湯
  • 葛根湯

漢方治療は即効性を期待するものではなく、長期的に体調を整える治療法です。
比較的軽症の方や、他の治療法と併用するケースが多くみられます。

男性ホルモン補充療法(TRT

男性更年期障害の大きな原因である男性ホルモン(テストステロン)の減少に直接アプローチする治療法です。

特徴

  • 定期的な男性ホルモン注射
  • 血液検査によるホルモン値・副作用チェック
  • 効果を実感しやすい

外部から男性ホルモンを補充する点では漢方と共通しますが、
より明確な効果を実感しやすいのが特徴です。

※2013年時点では、アメリカで約230万人が受けている治療法とされています。

ただし、

  • 前立腺がん
  • 多血症
  • 重度の前立腺肥大症

などの既往歴がある場合、治療を受けられないことがあります
必ず医師と十分に相談したうえで判断することが重要です。

プラセンタ治療

プラセンタに含まれる成分によって、ホルモンバランスを整えることを目的とした治療法です。

  • 女性の更年期障害では保険適用
  • 男性更年期障害では保険適用外(自費診療)

補助的な治療として選択されることが多い方法です。

男性更年期障害と向き合う際の注意点

男性更年期障害は人それぞれ

症状の出方や治療効果、改善までのスピードは個人差が大きく、
他人と比較することに意味はありません

「自分に合った治療」「自分のペース」を大切にすることが、長く向き合う上で重要です。

治療は長期的な視点が必要

男性更年期障害は、短期間で完治を目指す疾患ではありません。
長期的な視野で、じっくり取り組むことが治療の基本です。

短期的な効果だけで判断せず、継続する姿勢が大切です。

些細なことでも相談する

症状が他の疾患と似ているため、自己判断は禁物です。

  • 症状の変化
  • 体調の違和感
  • 不安に感じること

は、どんなに些細なことでも医師に相談しましょう。
正確な状況把握が、最適な治療につながります。